第4回 親の介護を考え始めたら読む! 認知症でも老人ホームに入れる? 施設選びで知っておきたいこと
「認知症があると、老人ホームに入れないのではないか」
「徘徊や夜間の不眠があっても受け入れてもらえる?」
「入居した後に症状が進んだら、退去しなければならないの?」
認知症のあるご家族の老人ホームを探すとき、このような不安を感じる方は少なくありません。
結論から言うと、認知症があっても入居できる老人ホームや介護施設は数多くあります。
ただし、施設によって、
- 対応できる認知症の症状
- 必要な介護の程度
- 夜間の職員体制
- 医療的な支援
- 入居後に症状が進んだ場合の対応
は異なります。
そのため、「認知症を受け入れています」という説明だけで判断せず、本人の状態を具体的に伝え、その施設で安心して暮らし続けられるかを確認することが大切です。
今回は、認知症の方が利用できる主な施設と、施設選びで確認したいポイントを分かりやすく解説します。
認知症があっても老人ホームには入居できます
認知症と診断されたからといって、老人ホームへ入れなくなるわけではありません。
特別養護老人ホーム、介護付き有料老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、認知症グループホームなど、多くの施設が認知症の方を受け入れています。
ただし、受け入れの可否は、認知症という病名だけで決まるものではありません。
施設側は、主に次のような点を確認します。
- 一人で歩けるか
- 食事や排せつにどの程度の介助が必要か
- 夜間に眠れているか
- 外へ出ようとすることがあるか
- 他の入居者との共同生活が可能か
- 暴言や暴力があるか
- 持病や医療処置があるか
- 薬を安定して服用できているか
大切なのは、症状を隠さず、現在の生活状況を正確に伝えることです。
入居を断られることを心配して、徘徊や夜間の状態などを伝えなかった場合、入居後に施設側が対応できず、本人も家族も困ることがあります。
認知症の「症状」だけで本人を判断しない
認知症では、記憶力や判断力が低下するだけでなく、生活環境や体調によってさまざまな行動が現れることがあります。
例えば、
- 同じことを何度も尋ねる
- 帰宅しようとする
- 夜中に歩き回る
- 介助を拒否する
- 急に怒り出す
- 物を盗られたと訴える
- 食事をしたことを忘れる
といった行動です。
こうした状態は、認知症の行動・心理症状と呼ばれることがあります。
ただし、本人が意味もなく困った行動をしているとは限りません。
「自宅へ帰りたい」と繰り返す背景には、
- 知らない場所で不安を感じている
- 家族を探している
- トイレへ行きたい
- 痛みや不快感がある
- 以前の生活習慣に戻ろうとしている
といった理由が隠れている場合があります。
厚生労働省の資料でも、認知症の人を一人の主体として尊重し、本人の希望や残されている力を活かした支援が重要とされています。
施設を選ぶ際には、単に行動を制止するのではなく、本人の不安や行動の理由を考えながら対応してくれるかを確認することが大切です。
認知症の方が利用できる主な施設
1.認知症グループホーム
認知症グループホームは、認知症の方が少人数で共同生活を送る施設です。
正式には「認知症対応型共同生活介護」と呼ばれます。
家庭的な環境の中で、食事の準備、掃除、洗濯などを職員と一緒に行いながら、本人ができることを活かして生活します。
グループホームでは、認知症の方が可能な限り自立した日常生活を送れるよう、日常生活上の支援や機能訓練などが提供されます。
主な入居条件
原則として、次の条件を満たす必要があります。
- 医師から認知症と診断されている
- 要支援2または要介護1~5の認定を受けている
- 施設がある市区町村に住民票がある
- 少人数での共同生活が可能
要支援1の方は、認知症グループホームを利用できません。また、地域密着型サービスのため、原則として他の市区町村にある施設は利用できません。
グループホームが向いている可能性がある方
- 認知症の診断を受けている
- 少人数の落ち着いた環境が合っている
- 声かけや見守りがあれば生活に参加できる
- 住み慣れた地域で暮らしたい
- 大規模な施設では不安が強くなりやすい
一方で、常時高度な医療管理が必要な方や、共同生活が著しく難しい方は、受け入れが難しいことがあります。
医療体制や看取りへの対応は施設によって異なるため、事前に確認しましょう。
2.特別養護老人ホーム
特別養護老人ホームは、日常生活の多くに介護が必要で、自宅生活が難しい方が入居する介護保険施設です。
認知症の方も多く生活しています。
原則として要介護3以上が対象ですが、認知症の症状や家庭環境など、やむを得ない事情がある場合は、要介護1または2でも特例入所の対象になることがあります。
特養が向いている可能性がある方
- 認知症に加えて身体介護も多く必要
- 長期的に生活できる施設を探している
- 家族だけでの介護が難しい
- 費用をできるだけ抑えたい
ただし、申し込みから入居まで時間がかかる場合があります。
また、同じ特養でも、認知症への対応経験、夜間体制、医療対応には違いがあります。
3.介護付き有料老人ホーム
介護付き有料老人ホームでは、施設の職員から食事、入浴、排せつなどの介護サービスを受けられます。
認知症の方を積極的に受け入れている施設もあり、認知症専用フロアを設けているところもあります。
介護付き有料老人ホームが向いている可能性がある方
- 24時間の介護体制を重視したい
- 認知症と身体介護の両方が必要
- 将来、介護度が上がっても住み続けたい
- 医療連携や看取りへの対応を重視したい
ただし、「認知症対応可」と書かれていても、すべての症状に対応できるとは限りません。
徘徊、夜間不眠、介護拒否、暴言・暴力などについて、どこまで受け入れられるかを具体的に確認しましょう。
4.住宅型有料老人ホーム
住宅型有料老人ホームは、食事や見守りなどが付いた高齢者向けの住まいです。
介護サービスは、訪問介護、訪問看護、デイサービスなどを組み合わせて利用します。
認知症の方を受け入れている施設も多くありますが、介護度や症状が進行した場合の対応は施設によって大きく異なります。
確認したいこと
- 夜間の職員数
- 居室から出た際の見守り体制
- 訪問介護をどの程度利用できるか
- 認知症が進行しても住み続けられるか
- 医療や看取りに対応できるか
入居時には問題がなくても、認知症が進んだときに住み替えが必要になる場合があります。
5.サービス付き高齢者向け住宅
サービス付き高齢者向け住宅は、安否確認と生活相談が付いた高齢者向け住宅です。
比較的自立している方を対象とする住宅もあれば、認知症や重度介護に対応する住宅もあります。
名称だけでは対応範囲が分からないため、必ず個別に確認しましょう。
特に、
- 夜間も職員が常駐しているか
- 認知症の方への見守りが可能か
- 外へ出ようとした場合にどう対応するか
- 介護度が上がった場合も入居を継続できるか
を確認することが重要です。
6.介護老人保健施設
介護老人保健施設、いわゆる老健でも、認知症の方を受け入れることがあります。
ただし、老健はリハビリを行い、在宅復帰を目指す施設です。
長期的な生活場所としてではなく、病院を退院した後のリハビリや、自宅へ戻る準備のために利用されることが一般的です。
認知症専門棟を設けている老健もありますが、入所期間や退所後の生活について早めに相談しておく必要があります。
徘徊があっても入居できる?
いわゆる徘徊がある場合でも、入居できる施設はあります。
ただし、施設によって対応方法は異なります。
確認したいのは、
- 居室やフロアから外へ出た際の見守り
- 出入口の安全管理
- 夜間の職員体制
- センサーなどの見守り機器
- 本人が落ち着ける生活環境
- 外出や散歩の機会
です。
ただ鍵をかけて外へ出られなくするだけでは、本人の不安やストレスが強くなる場合があります。
本人が歩こうとする理由を考え、安全に歩ける環境や日中の活動を整えている施設が望ましいでしょう。
暴言や暴力がある場合は?
暴言や暴力があるからといって、必ず入居できないわけではありません。
まず、行動の背景を確認する必要があります。
認知症の方の興奮や拒否には、
- 痛み
- 便秘
- 尿路感染症
- 脱水
- 睡眠不足
- 薬の副作用
- 環境の変化
- 声のかけ方への不安
などが関係していることがあります。
急に症状が強くなった場合は、認知症の進行だけでなく、身体の病気や薬の影響も考える必要があります。
施設へ相談するときは、「暴力があります」とだけ伝えるのではなく、
- いつ起こるのか
- 誰に対して起こるのか
- どのような介助のときに起こるのか
- どれくらいの頻度か
- 落ち着く方法があるか
を具体的に伝えましょう。
夜眠らない場合でも入居できる?
昼夜逆転や夜間の歩行がある方を受け入れる施設もあります。
ただし、夜間の職員数は昼間より少ないことが一般的です。
見学時には、
- 夜間は何人の職員がいるか
- 夜中に起きた場合はどう対応するか
- 転倒防止対策はあるか
- 睡眠薬に頼りすぎないケアをしているか
- 昼間の活動や運動を取り入れているか
を確認しましょう。
夜眠れない原因として、痛み、頻尿、便秘、不安、日中の活動不足、薬の影響などが隠れている場合もあります。
認知症が進んだら退去しなければならない?
認知症が進行しただけで、直ちに退去となるとは限りません。
しかし、次のような状態になると、施設によっては住み替えを求められることがあります。
- 常時高度な医療処置が必要になった
- 長期間の入院が必要になった
- 他の入居者への重大な危険が続いている
- 施設の人員や設備では安全を確保できない
- 契約上の入居条件を満たさなくなった
重要なのは、入居時の状態だけでなく、将来の変化への対応を確認しておくことです。
契約前に、
「認知症が進んだ場合も住み続けられますか?」
「どのような状態になると退去が必要ですか?」
「看取りまで対応できますか?」
と具体的に尋ねましょう。
医療が必要な場合の確認ポイント
認知症の方も、高血圧、糖尿病、心不全、腎臓病などの持病を抱えていることがあります。
施設を選ぶときは、認知症への対応だけでなく、医療体制も確認する必要があります。
確認したい医療内容
- 訪問診療を受けられるか
- 看護師が配置されている時間
- 夜間の緊急対応
- インスリン注射
- 在宅酸素
- 胃ろうや経管栄養
- たんの吸引
- 人工透析への通院
- 看取り
- 急変時の搬送先
厚生労働省は、認知症の方の状態変化に応じて、医療と介護が切れ目なく連携することの重要性を示しています。
「認知症に強い施設」であっても、必要な医療処置に対応できるとは限らないため、両方を確認しましょう。
薬の管理も施設選びの重要なポイント
認知症が進むと、本人だけで薬を管理することが難しくなる場合があります。
例えば、
- 薬を飲んだことを忘れる
- 同じ薬を重ねて飲む
- 薬を拒否する
- 薬を口から出す
- 薬を隠してしまう
- 食前・食後の区別ができない
といったことがあります。
施設では、職員、医師、看護師、薬剤師などが連携し、薬の管理を支援します。
見学時には、次の点を確認しましょう。
- 薬は誰が保管するのか
- 服用したことを誰が確認するのか
- 薬剤師はどのくらいの頻度で訪問するのか
- 薬を拒否した場合はどうするのか
- 飲み込みにくい場合に医師へ相談できるか
- 複数の病院の薬をまとめて確認できるか
- 急な興奮や不眠に対し、すぐ薬を増やす対応になっていないか
認知症の医療・介護連携では、病名だけでなく、処方内容や薬の目的を関係者間で共有することも重要です。
認知症の施設見学で確認したい10項目
1.職員の声のかけ方
入居者を急かしたり、子ども扱いしたりしていないかを見ます。
本人の目を見て、ゆっくり説明している施設は安心感があります。
2.入居者の表情
入居者が穏やかに過ごしているか、落ち着かず歩き回っている方に職員がどのように関わっているかを確認します。
3.日中の過ごし方
一日中テレビを見ているだけではなく、散歩、家事、体操、趣味など、本人が役割を持てる活動があるかを確認します。
4.外出や散歩の機会
安全を理由に外出を極端に制限していないかを確認します。
5.夜間の職員体制
夜勤者の人数や、夜間に落ち着かない方への対応を尋ねます。
6.医療連携
訪問診療、看護師の配置、協力医療機関、緊急時の対応を確認します。
7.薬の管理方法
薬の保管、配薬、服用確認、副作用の観察などを確認します。
8.症状が進んだ場合の対応
介護度や医療依存度が上がっても住み続けられるかを確認します。
9.家族との情報共有
体調や生活の変化を、どのような方法で家族へ伝えるかを確認します。
10.退去条件
どのような状態になると退去や住み替えが必要になるのか、契約書で確認します。
本人に合う施設を見つけるために伝えたい情報
施設へ相談する際は、診断名や介護度だけでなく、本人のこれまでの生活を伝えることが大切です。
例えば、
- 以前の仕事
- 趣味や好きなこと
- 毎日の生活習慣
- 好きな食べ物
- 苦手なこと
- 落ち着く声のかけ方
- 不安になりやすい状況
- 家族との関係
- 睡眠や排せつのリズム
- 薬を飲む際の工夫
などです。
認知症の方への支援では、本人の経歴や趣味、その人らしさを示す情報を医療・介護関係者で共有することが大切だとされています。
「認知症の人」としてではなく、その人自身を知ってもらうことが、本人に合うケアにつながります。
家族が罪悪感を抱えすぎないために
施設入居を考えると、
「自分がもう少し頑張ればよいのではないか」
「親を見捨てることになるのではないか」
と悩む家族もいます。
しかし、認知症の介護は、時間の経過とともに必要な支援が変化します。
家族だけで24時間支え続けることには限界があります。
施設へ入居することは、家族が本人との関係を終わらせることではありません。
食事、排せつ、夜間の見守りなどを専門職に任せることで、家族が介護者としてだけでなく、親子や夫婦として穏やかに関われるようになることもあります。
厚生労働省も、認知症の本人だけでなく、介護する家族の心身や生活を支えることの必要性を示しています。
よくある質問
Q1.認知症の診断がなくてもグループホームへ入れますか?
原則として、グループホームの入居には医師による認知症の診断が必要です。
物忘れが増えているものの診断を受けていない場合は、かかりつけ医や認知症疾患医療センターなどへ相談しましょう。
Q2.要支援1でもグループホームへ入れますか?
要支援1の方は利用できません。
認知症グループホームは、要支援2または要介護1~5の方が対象です。
Q3.徘徊があると必ず入居を断られますか?
必ず断られるわけではありません。
見守り体制や建物の構造、夜間の人員などによって対応できるかが異なります。
行動の頻度や時間帯、過去の事故などを具体的に伝えましょう。
Q4.暴言や介護拒否がある場合でも入れますか?
受け入れる施設もありますが、症状の程度や頻度によって異なります。
身体疾患、痛み、便秘、薬の影響などが原因になっていないか、医療機関にも相談することが大切です。
Q5.認知症が進んでも同じ施設で暮らせますか?
施設によって異なります。
介護度の上昇には対応できても、高度な医療処置や長期入院が必要になると住み替えを求められる場合があります。
入居前に退去条件を確認しましょう。
Q6.本人には認知症だと伝えた方がよいですか?
本人の理解力、性格、診断後の支援体制などを踏まえて考える必要があります。
家族だけで判断せず、診断した医師や専門職と相談し、本人の尊厳や今後の生活に配慮して伝えることが大切です。
薬剤師からひとこと
認知症の症状が急に強くなったとき、すべてを認知症の進行だと考えないことが大切です。
高齢者では、
- 発熱
- 尿路感染症
- 便秘
- 脱水
- 痛み
- 睡眠不足
- 入院や引っ越しなどの環境変化
- 薬の追加や変更
などをきっかけに、急に混乱したり、落ち着かなくなったりすることがあります。
特に、睡眠薬、抗不安薬、抗アレルギー薬、排尿に関係する薬などが、眠気、ふらつき、混乱に影響する場合があります。
ただし、薬は自己判断で中止してはいけません。
「最近急に夜眠らなくなった」
「歩き方が不安定になった」
「薬を変えてから様子が違う」
という変化があれば、医師や薬剤師へ伝えてください。
薬の内容、身体の状態、生活環境を一緒に見直すことで、本人が落ち着いて過ごせる可能性があります。
まとめ
認知症があっても、入居できる老人ホームや介護施設は数多くあります。
主な選択肢には、
- 認知症グループホーム
- 特別養護老人ホーム
- 介護付き有料老人ホーム
- 住宅型有料老人ホーム
- サービス付き高齢者向け住宅
- 介護老人保健施設
などがあります。
ただし、同じ種類の施設でも、
- 徘徊への対応
- 夜間の見守り
- 暴言や介護拒否への対応
- 医療体制
- 薬の管理
- 看取り
- 退去条件
は異なります。
施設を選ぶときは、「認知症対応可」という言葉だけで決めず、本人の状態を具体的に伝え、実際の対応方法を確認しましょう。
最も大切なのは、認知症の症状だけを見るのではなく、
本人がどのような生活を送り、何を大切にしてきた人なのか
を施設の職員に知ってもらうことです。
本人が安心でき、家族も無理なく関わり続けられる場所を、専門職と一緒に探していきましょう。
次回は、
「老人ホームでは薬は誰が管理しているの?薬剤師の仕事を紹介」
について、入居後の薬の保管、配薬、飲み忘れ防止、残薬管理、医師・看護師・介護士・薬剤師の連携を詳しく解説します。
※本記事は一般的な情報をまとめたものです。入居条件や認知症・医療への対応範囲は施設によって異なります。実際に検討する際は、各施設、地域包括支援センター、ケアマネジャー、医療機関などへご確認ください。
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