第9回 老人ホームの一日を紹介!実際の生活はどんな感じ?
「老人ホームでは、毎日どのように過ごすのだろう」
「朝から夜まで、決められた予定どおりに動かなければならないの?」
「食事や入浴以外の時間は、何をしているの?」
老人ホームへの入居を考えている方の中には、施設での生活を具体的に想像できず、不安を感じている方も少なくありません。
ご本人からすると、
「一日中、部屋に閉じ込められるのではないか」
「知らない人たちと、ずっと一緒に過ごすのではないか」
「好きな時間に寝たり、テレビを見たりできなくなるのではないか」
という心配があるかもしれません。
ご家族にとっても、
- 食事はきちんと取れるのか
- 夜間は見守ってもらえるのか
- レクリエーションに参加しないといけないのか
- 家族はいつ面会できるのか
- 薬はどのように飲むのか
といった疑問があります。
老人ホームの一日は、施設の種類、本人の介護度、健康状態、生活習慣によって異なります。
一方で、多くの施設では、食事、入浴、服薬、体調確認などの基本的な支援を受けながら、本人が安心して生活できるよう一日の流れが組み立てられています。
今回は、老人ホームでの一般的な一日の流れと、本人らしい生活を送るために確認したいポイントを分かりやすく紹介します。
老人ホームの一日は、すべて決められているの?
老人ホームでは、食事や入浴、服薬、職員の勤務体制などの関係から、ある程度の時間割が決められています。
例えば、
- 朝食
- 昼食
- 夕食
- 入浴
- 健康確認
- レクリエーション
- 就寝前の服薬
などには、おおよその時間があります。
しかし、すべての入居者が同じ時刻に起き、同じ活動をし、同じ時刻に寝なければならないわけではありません。
施設によっては、
- 朝はゆっくり起きる
- 朝食を少し遅らせる
- レクリエーションには参加しない
- 居室でテレビや読書を楽しむ
- 家族と外出する
- 昼寝をする
- 自分の好きな服を選ぶ
といった過ごし方ができます。
大切なのは、施設の運営上の予定だけでなく、本人のこれまでの生活習慣や希望を、どこまで尊重してもらえるかです。
老人ホームの一般的な一日の流れ
以下は、介護付き有料老人ホームや特別養護老人ホームなどで想定される一般的な一例です。
実際の時間や内容は、施設や本人の状態によって異なります。

午前6時〜7時ごろ 起床・着替え・身支度
朝になると、職員が入居者の居室を訪れ、必要に応じて起床を支援します。
自分で起きられる方は、自分のペースで起床することもあります。
介助が必要な方には、
- ベッドからの起き上がり
- 車いすへの移乗
- トイレ
- 洗顔
- 歯磨き
- 着替え
- 整髪
などの支援が行われます。
起床時間は施設によって異なりますが、本人の体調や睡眠状態に合わせて調整される場合もあります。
朝の身支度で大切なこと
老人ホームであっても、毎日同じ服で過ごすのではなく、その日の気分や季節に合わせて服を選ぶことは、本人らしい生活につながります。
職員がすべて決めるのではなく、
「今日はどちらの服にしますか」
と本人へ尋ねてくれるかどうかも、生活の質を考えるうえで大切です。
午前7時〜8時ごろ 健康確認・朝の服薬
朝食の前後に、体調の確認が行われます。
必要に応じて、
- 体温
- 血圧
- 脈拍
- 酸素飽和度
- 顔色
- 食欲
- 排せつ状況
などを確認します。
毎日すべての測定を行うとは限らず、持病や本人の状態によって内容は異なります。
朝に薬がある方には、決められた時間に薬を渡し、服用できたかを確認します。
糖尿病の治療を受けている方では、血糖測定やインスリン注射が必要な場合もあります。
午前8時ごろ 朝食
食堂や共同スペースで朝食を取ります。
自分で食堂まで移動できる方もいれば、職員の介助で移動する方もいます。
体調や本人の希望によっては、居室で食事を取ることもあります。
朝食の内容は施設によって異なりますが、一般的には、
- ご飯やパン
- みそ汁やスープ
- 卵料理
- 魚や肉
- 野菜
- 乳製品
- 果物
など、栄養のバランスを考えた献立が提供されます。
食事介助が必要な場合
自分で食事を取ることが難しい場合には、職員が姿勢を整え、本人のペースに合わせて介助します。
飲み込む力が低下している方には、
- やわらか食
- 刻み食
- ミキサー食
- とろみを付けた飲み物
などが提供されることがあります。
食事の形だけでなく、安全に飲み込める姿勢や食べる速度も重要です。
午前9時ごろ 口腔ケア・排せつ・自由時間
朝食後は、歯磨きや入れ歯の手入れなどの口腔ケアを行います。
口の中を清潔に保つことは、虫歯や歯周病だけでなく、誤嚥性肺炎の予防にもつながります。
その後は、排せつ介助や居室の整理などを行いながら、比較的自由に過ごします。
例えば、
- 新聞を読む
- テレビを見る
- 音楽を聴く
- 家族へ電話する
- 他の入居者と会話する
- 居室で休む
といった過ごし方があります。
午前10時ごろ 体操・レクリエーション・入浴
午前中には、体操やレクリエーションが行われる施設があります。
内容は施設によって異なりますが、
- ラジオ体操
- 椅子に座って行う運動
- ボール体操
- 歌
- 脳トレ
- 書道
- 塗り絵
- 手芸
- 園芸
- 季節の行事
などがあります。
レクリエーションは、体力や認知機能の維持だけでなく、他の人との交流や生活の楽しみにつながります。
ただし、参加を強制されることが望ましいわけではありません。
一人で静かに過ごしたい方や、集団活動が苦手な方もいます。
本人の気分や体調を確認しながら、参加するかどうかを選べることが大切です。
入浴は毎日できる?
入浴回数は施設によって異なります。
多くの施設では、週に2回程度を基本としているところがありますが、施設の方針や本人の状態によって異なります。
自分で浴室へ行き、入浴できる方もいれば、職員の介助が必要な方もいます。
施設には、身体状態に応じて利用できる浴槽があります。
例えば、
- 一般的な個浴
- 手すり付きの浴槽
- 座ったまま入れる浴槽
- 寝た状態でも入浴できる特殊浴槽
などです。
入浴日は職員が、
- 体温
- 血圧
- 皮膚の状態
- 体調
- 傷や発赤
- むくみ
などを確認する機会にもなります。
体調が悪い場合は、入浴を中止し、清拭や部分浴へ変更することもあります。
午前11時〜正午ごろ 昼食前の準備

昼食前には、トイレへ行ったり、手を洗ったりして食事の準備をします。
昼に薬がある方は、食前または食後に服用します。
薬を飲んだことを忘れやすい方には、職員が服用を確認します。
食堂への移動に時間がかかる方もいるため、職員は一人ひとりの状態に合わせて案内します。
正午ごろ 昼食
昼食は、朝食と同様に食堂などで取ります。
食事中は、職員が食事量や水分量、むせの有無などを確認します。
高齢者では、食欲低下や脱水が体調悪化の早期サインになることがあります。
そのため、
- いつもより食べていない
- 水分を取っていない
- むせが増えた
- 食事中に眠っている
- 食べるのに時間がかかる
といった変化があれば、看護師や医師、薬剤師などへ共有されます。

午後1時ごろ 休憩・昼寝
昼食後は、居室や共有スペースで休みます。
昼寝をする方もいれば、テレビを見たり、会話を楽しんだりする方もいます。
高齢者にとって休息は大切ですが、長時間の昼寝が続くと、夜に眠れなくなる場合があります。
施設では、本人の体調や夜間の睡眠状態を見ながら、日中の活動量を調整することがあります。
午後2時ごろ レクリエーション・リハビリ・趣味活動
午後にもレクリエーションや個別活動が行われる場合があります。
施設によっては、
- 理学療法士などによるリハビリ
- 歩行練習
- 関節を動かす運動
- 認知機能の訓練
- 音楽療法
- カラオケ
- おやつ作り
- 買い物
- 散歩
- 外出行事
などがあります。
本人が以前から続けてきた趣味を、施設でも続けられることがあります。
例えば、
- 編み物
- 将棋
- 囲碁
- 読書
- 園芸
- 写真
- 絵画
- 楽器
などです。
施設を選ぶ際には、レクリエーションの数だけでなく、本人が興味を持てる内容があるかを確認しましょう。
午後3時ごろ おやつ・水分補給
午後には、おやつと飲み物が提供される施設があります。
おやつは楽しみであるだけでなく、食事量が少ない方のエネルギー補給や水分補給にもなります。
糖尿病や飲み込みの状態などに応じて、内容が調整されることもあります。
おやつを食べながら入居者同士で会話したり、職員と話したりする時間にもなります。
午後4時ごろ 自由時間・家族との面会
夕食までの時間は、比較的自由に過ごします。
- 居室で休む
- テレビを見る
- 読書をする
- 職員と会話する
- 他の入居者と過ごす
- 家族と面会する
- 散歩をする
など、過ごし方はさまざまです。
家族が面会に来た場合は、居室や面会スペースで一緒に過ごします。
施設によって面会時間や予約の必要性は異なります。
また、家族と外食や買い物に出かけたり、自宅へ一時的に外泊したりできる場合もあります。
午後5時〜6時ごろ 夕食

夕食は、施設によって午後5時台または6時台に提供されます。
自宅での生活と比べて、夕食が早いと感じる方もいます。
夕食後から就寝までの時間が長くなる場合があるため、本人の生活習慣に合うかどうかは確認しておきたいポイントです。
夕食時にも、食事量、水分、むせ、体調などが確認されます。
夕食後に薬を服用する方には、職員が薬を渡し、服用を確認します。
午後7時ごろ 口腔ケア・着替え・自由時間
夕食後は歯磨きや入れ歯の手入れを行います。
その後は、
- テレビを見る
- 家族と電話する
- 音楽を聴く
- 職員と話す
- パジャマに着替える
- ベッドで休む
など、就寝までゆっくり過ごします。
自分で着替えることが難しい方には、職員が介助します。
夜間の排せつに備えて、トイレへ案内することもあります。
午後8時〜9時ごろ 就寝前の服薬・就寝
寝る前に薬がある方は、職員の確認のもとで服用します。
睡眠薬を使用している場合は、
- 飲んだ後に安全にベッドへ移動できるか
- 夜間のふらつきがないか
- 翌朝まで眠気が残っていないか
などに注意します。
就寝時間は施設の予定として設けられていても、本人がすぐに眠らなければならないとは限りません。
居室で静かにテレビを見たり、読書をしたりして過ごせる施設もあります。
ただし、共同生活のため、夜間の音量や照明には一定のルールがあります。
夜中は誰が見守ってくれる?
夜間は、夜勤の介護職員などが施設内で入居者を見守ります。
施設によっては看護師が24時間常駐している場合もあれば、夜間は連絡を受けて対応するオンコール体制の場合もあります。
夜間には主に、
- 定期的な巡回
- 排せつ介助
- 体位交換
- おむつ交換
- 転倒への対応
- 眠れない方への声かけ
- 発熱や急変時の連絡
- ナースコールへの対応
などが行われます。
認知症などにより夜間に居室を出て歩く方には、安全を確認しながら見守ります。
施設見学の際には、
- 夜勤職員は何人か
- 夜間に看護師はいるか
- 発熱や転倒時は誰へ連絡するか
- 救急搬送の判断は誰が行うか
を確認しておきましょう。
施設での生活に「自由」はある?
老人ホームでは、共同生活を安全に運営するためのルールがあります。
一方で、本人の自由や選択がどの程度尊重されるかは、施設によって異なります。
例えば、次のような違いがあります。
- 起床時間を自分で決められるか
- 食事時間に幅があるか
- レクリエーションを断れるか
- 居室で食事を取れるか
- 外出や外泊ができるか
- お酒を飲めるか
- 居室でお菓子を保管できるか
- 家具や家電を持ち込めるか
- 自分で買い物へ行けるか
施設を選ぶ際は、
「一日の予定」だけでなく、「本人が自分で選べることは何か」
を確認することが大切です。
レクリエーションには参加しないといけない?
基本的に、本人の意思に反して強制的に参加させることは望ましくありません。
レクリエーションが好きな方もいれば、静かに一人で過ごす方が落ち着く方もいます。
一方で、本人が部屋に閉じこもりがちになり、身体機能や気力が低下している場合には、職員が無理のない範囲で参加を勧めることがあります。
大切なのは、
- 本人の興味
- 体調
- 性格
- 生活歴
- その日の気分
を考えて声をかけてもらえることです。
家族はどのように関わる?
老人ホームへ入居した後も、家族との関係は続きます。
家族にできることには、
- 面会
- 電話やオンライン通話
- 外出や外食
- 誕生日や行事への参加
- 衣類や日用品の準備
- 医療機関の受診への付き添い
- 本人の好みや生活歴を職員へ伝える
- 体調や生活について施設から説明を受ける
などがあります。
家族が訪れることは、本人にとって大きな楽しみになる場合があります。
一方で、家族の面会頻度が少ないからといって、必ずしも本人が不幸とは限りません。
施設内で人間関係や役割ができ、新しい生活に慣れていく方もいます。
無理のない範囲で、本人と家族に合った関わり方を続けることが大切です。
老人ホームで友達はできる?
施設内で気の合う入居者と知り合い、会話や食事を楽しむ方もいます。
一方、必ず友達を作らなければならないわけではありません。
入居者同士の関係は、
- 年齢
- 性格
- 認知機能
- 会話のしやすさ
- 趣味
- 生活リズム
などによって異なります。
施設側が食事の席や活動内容を工夫し、相性の良い方と自然に関われるよう支援することもあります。
人付き合いが苦手な方には、無理に交流を求めず、一人で落ち着ける時間を大切にしてもらう必要があります。
入居後に生活リズムが変わることもあります
自宅では昼夜逆転していた方が、施設で朝食や活動の時間が整うことで、生活リズムが改善する場合があります。
反対に、施設の環境に慣れず、
- 夜眠れない
- 食欲が落ちる
- 部屋へ戻りたがる
- 家族へ何度も電話する
- 落ち着かなくなる
といった反応が出ることもあります。
特に認知症の方は、環境が変わることで一時的に混乱が強くなる場合があります。
入居直後は、すぐに生活へ慣れることを求めず、本人の様子を見ながら支援していくことが大切です。
施設の一日を確認するときの質問
見学や入居相談の際には、次のように質問してみましょう。
- 起床・就寝時間は決められていますか
- 本人の生活習慣に合わせられますか
- 食事時間に遅れた場合はどうなりますか
- 居室で食事を取れますか
- レクリエーションへの参加は自由ですか
- 入浴は週に何回ですか
- 散歩や外出はできますか
- 家族と外食や外泊はできますか
- 面会時間や予約のルールはありますか
- 夜間は何人の職員がいますか
- 夜中に眠れない場合はどう対応しますか
- 薬はいつ、誰が渡しますか
パンフレットの一日の流れだけでなく、本人の希望に合わせてどの程度調整できるかを確認しましょう。
よくある質問
Q1.老人ホームでは朝早く起こされますか?
施設の食事時間や職員体制によって、起床を促される時間があります。
ただし、本人の体調や生活習慣に合わせて調整できる施設もあります。
朝ゆっくり過ごしたい方は、入居前に相談しましょう。
Q2.昼間はずっと食堂にいなければなりませんか?
必ずしもそうではありません。
居室で休んだり、テレビを見たりできる施設が一般的ですが、介護や安全上の理由で共用スペースで過ごす時間が長くなる場合もあります。
Q3.好きなテレビ番組を見られますか?
居室にテレビを持ち込める施設であれば、自分の好きな番組を見られます。
テレビの持ち込み、電気代、アンテナ利用料などについて確認しましょう。
Q4.お菓子や飲み物を自由に取れますか?
施設の方針や本人の病気によって異なります。
糖尿病、嚥下機能、認知症などの状態によっては、職員が管理する場合があります。
Q5.毎日同じような生活になりますか?
食事や入浴など、基本的な流れはある程度決まっています。
一方で、季節の行事、外出、誕生日会、レクリエーションなどによって変化があります。
Q6.夜中にトイレへ行きたくなったらどうしますか?
自分で安全に行ける方は、自分で移動することがあります。
介助が必要な方はナースコールを使用したり、職員が定期的に訪室したりして支援します。
薬剤師からひとこと
老人ホームでの一日の流れと薬の管理には、深い関係があります。
薬は一般的に、
- 起床時
- 朝食前
- 朝食後
- 昼食前後
- 夕食前後
- 就寝前
など、決められた時間に服用します。
しかし、本人の食事量や睡眠、体調によっては、いつもどおり服用してよいか判断が必要になることがあります。
例えば、
- 食事をほとんど取れなかった
- 嘔吐や下痢がある
- いつもより眠気が強い
- 血圧が低い
- 脱水が疑われる
- 飲み込みにくくなった
といった場合です。
施設職員が生活の中で変化に気付き、看護師や医師、薬剤師へ伝えることが、安全な薬物治療につながります。
また、薬の服用時間が施設の生活に合わず、本人や職員の負担になっている場合には、医師と相談して服用回数や時間を見直せることもあります。
薬を施設の都合だけで管理するのではなく、本人の生活に合わせて調整できるかが重要です。
まとめ
老人ホームの一日は、一般的に次のような流れで進みます。
- 起床・着替え・身支度
- 健康確認・朝の服薬
- 朝食・口腔ケア
- 体操・入浴・自由時間
- 昼食・休憩
- レクリエーション・リハビリ
- おやつ・面会・自由時間
- 夕食・服薬
- 口腔ケア・着替え
- 就寝・夜間の見守り
ただし、老人ホームは全員が同じ時間割で動く場所ではありません。
本人の体調、介護度、認知機能、生活習慣、希望に応じて、一日の過ごし方を調整してもらえることもあります。
施設を選ぶ際には、
- 一日の予定
- 食事や入浴の時間
- 自由時間の過ごし方
- レクリエーションへの参加
- 面会や外出
- 夜間の見守り
- 薬の管理
を確認しましょう。
大切なのは、設備や行事の多さだけではありません。
本人が安心して、自分らしいペースで毎日を過ごせること
が、老人ホームでの暮らしを考えるうえで最も重要です。
次回は、
「最期まで老人ホームで暮らせる?看取りについて知っておきたいこと」
について、施設での看取り、救急搬送、医療との連携、家族の関わりを分かりやすく解説します。
※本記事は老人ホームでの一般的な生活例をまとめたものです。実際の生活時間、入浴回数、レクリエーション、夜間体制、服薬方法などは施設や本人の状態によって異なります。入居前に各施設へ具体的にご確認ください。
コメントを送信