「眠れない」「寝つきが悪い」「途中で何度も目が覚める」——
こうした不眠症状は、年齢やストレス、生活リズムの乱れなどさまざまな原因で起こります。
医療機関では、症状に応じて**睡眠薬(眠剤)**が処方されますが、
その種類や作用はそれぞれ異なり、正しい理解と使い方が安全のカギになります。
本記事では、現役の医療者の視点から、眠剤の代表的な種類と注意点を整理します。
| 分類 | 主な薬剤例 | 作用の特徴 | 留意点 |
|---|---|---|---|
| ベンゾジアゼピン系 | レンドルミン、サイレース、ハルシオンなど | 脳の神経活動を抑えて眠気を誘発。短時間で効果を発揮。 | 長期使用で耐性・依存が生じやすい。高齢者は転倒リスクに注意。 |
| 非ベンゾジアゼピン系 | マイスリー、アモバン、ルネスタ | 作用部位がより限定的。翌朝の眠気や記憶障害が比較的少ない。 | アルコール併用で作用増強。服用直後は必ず就寝を。 |
| メラトニン受容体作動薬 | ロゼレム | 「体内時計」を整え、自然な眠気を促す。 | 効果発現までに数日〜数週かかる場合あり。 |
| オレキシン受容体拮抗薬 | ベルソムラ、デエビゴ | 覚醒を抑制し、眠気を自然に誘導。 | 翌朝の眠気が強い人も。自動車運転には注意。 |
💡ポイント:
眠剤は「睡眠の質」を高めるものではなく、**“眠りに入るきっかけを作る薬”**です。
根本的な改善には、生活習慣やストレス対策の見直しも欠かせません。
ほとんどの眠剤は、就寝直前に服用するのが原則。
飲んだあとにスマホ操作や家事を行うと、**記憶が途切れる(健忘)**ことがあります。
眠剤とお酒は相互に作用を強め、呼吸抑制・ふらつき・転倒などの危険が増します。
「少しだけだから…」という油断が命取りになることも。
効かないからと量を増やしたり、眠れる日だけスキップするなどの自己調整は危険です。
服薬リズムを変える場合は、必ず主治医または薬剤師へ相談を。
急にやめると「リバウンド不眠(離脱性不眠)」が起こることがあります。
医師の指示に従って1〜2週間単位で徐々に減らすことが安全です。
薬だけに頼らず、「眠りやすい体を作る」意識を持つことが、長期的な安眠への近道です。
眠剤は正しく使えば、あなたの眠りを支える大切な治療手段です。
しかし、服用法・生活習慣・医師との連携がそろって初めて安全に機能します。
「薬に助けてもらいながら、少しずつ自分の眠りを取り戻す」
それが現代の“上手な眠剤との付き合い方”です。