皆さん、こんにちは。
今日はシニア薬剤師の再就職における薬局とのマッチングの最適化についてお話しします。
少子高齢化が進む中、薬剤師の人材確保は大きな課題です。特に地方や小規模薬局では人手不足が深刻化しています。その一方で、定年や早期退職を迎えたシニア薬剤師の活躍の場が、まだ十分に整っていません。
こうしたなかで、シニア薬剤師の豊富な経験をどう活かすか。そして薬局側のニーズとどう結びつけるか。そのポイントについて、コーチングの考え方を交えて紹介していきます。
まずは背景からです。
大手の調剤薬局では薬剤師が充足しているケースが多い一方、地域の小規模薬局では薬事法で定められた必要人員を確保できず、運営が難しくなっている薬局もあります。
また、シニア薬剤師の多くは製薬会社や研究所で管理職を務めてきた方々です。マネジメントや研究のスキルは豊富ですが、調剤業務そのものの経験が乏しい場合が少なくありません。
そこで薬局が直面する課題は大きく5つあります。
①処方箋受付や調剤、服薬指導など実務経験の不足
②レセプト業務やシステム操作など現場特有の業務理解不足
③患者対応、医療接遇の経験不足
④最新の制度や薬剤情報への知識不足
⑤年齢に伴う体力や柔軟性への不安
これらを克服しなければ、シニア薬剤師が安心して働くことはできません。
解決の鍵となるのが「研修」と「コーチング」です。
研修では、調剤薬局での現場研修を徹底することが大切です。座学だけでなく、実際の作業を見学・体験し、ベテラン薬剤師の指導を受ける。システム操作や調剤機器の扱いを習得する。これらを体系的に学ぶことで、未経験者でも短期間でスキルを身につけられます。
例えばフレックス薬局では、6回の研修プログラムを用意しました。
第1回:薬局業務の全体像と法規制
第2回:処方箋の読み方と監査の基礎
第3回:調剤業務の実践(散剤・錠剤・液剤)
第4回:服薬指導と患者対応
第5回:薬歴管理
第6回:リスクマネジメントとチーム医療
各回2時間、合計12時間の研修で、実際に現場で役立つ知識とスキルを身につけます。
使用テキストです。
「調剤薬局の基本を学ぶために、新人薬剤師の教育で使われていたテキストを活用しました。
学習の項目が終わるたびに確認テストがあり、問題を解きながら、一歩ずつ理解を深めていただきました。」
「薬学管理を学んでいただくために、問題形式のこの2冊のテキストを使いました。
問題を解き、解説を読み進めることで理解を深め、服薬指導に必要な基本的な知識をしっかりと身につけていただきました。」
コーチングの役割
「ここで、もうひとつ重要な役割を果たすのが“コーチング”です。
シニア薬剤師にとって、再就職は大きな挑戦です。これまでのキャリアに誇りを持ちながらも、新しい環境に飛び込むのは決して簡単ではありません。
そこでコーチングでは、まず過去の経験を尊重したうえで、『未来の自分はどうなりたいか』を一緒に描いていきます。
そして、その未来像から逆算して、今なにをすべきかを明確にしていくのです。
例えば、“1年後はどうなっていたいか”“3年後はどんな姿になりたいか”。こうしたタイムラインを使って未来をイメージすることで、再就職後のキャリアを自分ごととして考えられるようになります。
一方、薬局側にも柔軟な受け入れが求められます。コーチングの傾聴の技法を活用することで、シニア薬剤師の価値観や強みをより深く理解できるようになります。単なる人員補充ではなく、『どんな強みを活かせるか』『どんな役割ならやりがいを持てるか』を、対話の中から見つけ出せるのです。
さらに、コーチングのリフレーミングという手法を使えば、“調剤経験が浅い”という弱みを、“マネジメントや後輩育成に強みがある”と新しい価値に置き換えることができます。
こうした対話を重ねることで、薬局とシニア薬剤師が、互いに納得できる形でのマッチングを実現できるのです。」
事例紹介
ここで、実際の事例を紹介します。
事例1
61歳、製薬会社の研究所勤務を経て早期退職。
一度薬局に挑戦しましたが、1年で退職。「調剤薬局勤務は難しい」と感じました。
しかし、研修を受けて再チャレンジ。現在はフレックス薬局で勤務を続けています。
事例2
57歳、製薬会社でMR管理職を経験。
退職後、研修を受け、調剤薬局で在宅担当として採用。
1年勤務後に退職しましたが、その経験をもとに現在も就職活動を続けています。
事例3
62歳、研究所所長を務めた男性。
アメリカでの勤務経験もあります。研修を終えた後、紹介会社を通じて調剤薬局に仮採用され、1か月後には本採用となりました。
これらの事例から、研修とコーチングを組み合わせることで、シニア薬剤師が再び現場で活躍できることがわかります。
まとめと展望
シニア薬剤師には「将来像の明確化」が大切です。
コーチングを通じて未来の姿を描き、再就職後のキャリアを自分ごととして考えられるようになります。
再就職にあたっては、最新の知識や薬局業務を学び直す 研修の場 が重要です。これにより自信を持って現場に適応できます。
薬局には柔軟な受け入れと理解が必要です。経験や強みを活かせる役割を、対話の中から見つけられます。
コーチングは関係を深める有効な手段です。弱みを強みに変え、納得感あるマッチングを実現します。
さらに、薬剤師不足の地方と連携し、シニア薬剤師が移り住んで働く仕組みを整えることも可能です。地方で暮らしたいと考える薬剤師にとって、新しい選択肢となり得ます。
シニア薬剤師の再就職は、単なる雇用支援ではなく、地域医療の持続可能性に直結する大きなテーマです。
経験を未来につなげる。そのために、研修とコーチングが大きな力になるのです。