マイクロプラスチックと脳の健康——集中力・記憶力・認知機能への影響とは?


「最近、物忘れが増えた気がする」「なんとなく集中力が続かない」──。
それは年齢のせいだけではないかもしれません。

近年の研究で、マイクロプラスチックが“脳”にも影響を与える可能性が報告されはじめています。
第6回となる今回は、マイクロプラスチックと神経系・認知機能の関係について、最新の情報と対策をお伝えします。


◆ 脳にまで届く? マイクロプラスチックの行方

これまで「消化管までで止まる」と考えられていたマイクロプラスチックですが、最近では、

  • 血液中から全身を循環する
  • 血液脳関門(Blood-Brain Barrier)を通過する可能性がある

という研究結果が相次いで発表されています。

🧠 出典:Leslie et al., 2022
“Discovery and quantification of plastic particle pollution in human blood”
Environment International

人間の血液中や胎盤、さらには脳組織からも微細なプラスチック粒子が見つかったという報告もあり、科学者の間でも緊急性が高まっています。


◆ 脳の神経細胞を壊す?そのメカニズム

マイクロプラスチックが体内に取り込まれると、次のような影響が脳に及ぶと考えられています。

● 炎症反応の引き起こし

プラスチック粒子が脳内に入ると、神経細胞の周囲で炎症が起きやすくなる
これは「神経炎症」と呼ばれ、アルツハイマー型認知症やうつ症状との関連が示唆されています。

● 酸化ストレスの増加

細胞が“サビる”原因とも言われる酸化ストレス。マイクロプラスチックは、細胞の酸化ダメージを促進する可能性があると報告されています。

● シナプス機能の低下

脳内の神経伝達に必要な**シナプス(情報のやり取り部分)**に影響が出ると、記憶力や学習力が低下する可能性があります。

🧪 出典:Chen et al., 2022
“Polystyrene microplastics exposure induces neurotoxicity in mice”
Journal of Hazardous Materials


◆ マウス実験での衝撃結果

2022年に中国の研究チームが行った動物実験では、

  • マイクロプラスチックを4週間与えたマウスに、
    ・記憶力の低下
    ・脳内での神経炎症反応
    ・不安行動の増加
    が見られたと報告されています。

つまり、脳に直接的なダメージを与える可能性があるというのです。

📄 出典:Chen et al., 上記論文より

もちろん、人間での研究はまだ限られていますが、初期の知見として注意すべき内容だといえるでしょう。


◆ 女性の脳はホルモンと深く関係している

女性の脳はエストロゲン(女性ホルモン)によって守られている側面があります。
エストロゲンには以下のような脳への働きがあると知られています:

  • 神経細胞の保護
  • 記憶・学習を支える神経伝達の強化
  • 血流促進による酸素・栄養供給

しかし、マイクロプラスチックに付着する内分泌かく乱物質(BPAなど)はこのエストロゲンの働きを邪魔する可能性があります。

つまり、プラスチックの影響で脳が“老けやすく”なることも懸念されているのです。

🧠 出典:Gore et al., 2015
“EDCs and brain development”
Endocrine Reviews


◆ 40代・50代女性は“脳の曲がり角”

ホルモンバランスが変化しやすい中年期は、脳も揺らぎやすい時期
そのうえ、環境要因(マイクロプラスチック)まで加われば、

  • 記憶力の低下
  • イライラや不眠
  • 判断力・注意力の低下
    といった症状が強く出る可能性があります。

この時期こそ、「脳を守る暮らし方」を意識したいですね。


◆ 今日からできる!脳にやさしいプラ対策

✅ 飲み物はガラス・陶器のマグカップで

→ プラ製タンブラーの代用に。

✅ 食品はラップより蜜蝋ラップや紙包みへ

→ 電子レンジ調理もガラス容器推奨。

✅ 使い捨てカトラリーやストローを卒業

→ 木製や金属製を持ち歩き用に。

✅ 寝室の空気を清潔に

→ ポリエステル素材の衣類・寝具の摩耗を減らし、空気清浄機を活用。

また、脳の健康を守るには以下のような習慣もおすすめです:

  • 十分な睡眠(7時間以上)
  • DHAやビタミンEなどの脳活栄養をとる
  • デジタルデトックス(SNSや画面から離れる時間)

🧠 まとめ

  • マイクロプラスチックは血液や脳内にも入り込む可能性がある
  • 神経細胞を傷つけ、記憶・集中力に影響する可能性が示されている
  • 女性ホルモンとの相互作用により、特に中年期女性は注意が必要
  • 日常的なプラ回避行動が、脳の健康を守る第一歩になる

📚 参考文献

  1. Leslie et al. (2022)
    “Discovery of Plastic Particles in Human Blood”
    Environment International
    https://doi.org/10.1016/j.envint.2022.107199
  2. Chen et al. (2022)
    “Polystyrene Microplastics Induce Neurotoxicity in Mice”
    Journal of Hazardous Materials
    https://doi.org/10.1016/j.jhazmat.2022.128484
  3. Gore et al. (2015)
    “Endocrine-Disrupting Chemicals and Brain Development”
    Endocrine Reviews

次回(第7回)では、「マイクロプラスチックと腸内環境」の関係に迫ります。
腸のバリア機能や免疫との関係、そして“腸から始まる健康”を守るコツをお届けします。

Kenko

Share
Published by
Kenko

Recent Posts

【第8回】

子どもと妊婦に忍び寄るマイクロ…

15時間 ago

【第7回】

マイクロプラスチックと腸内環境…

15時間 ago

【第5回】

マイクロプラスチックとホルモン…

15時間 ago

【第4回】

体内に入ったマイクロプラスチッ…

15時間 ago

【第3回】

マイクロプラスチックを避けて暮…

15時間 ago

【第2回】マイクロプラスチックの健康影響

マイクロプラスチックは体にどう…

16時間 ago