体内に入ったマイクロプラスチックはどうなる? 分解・排出・そして蓄積のリスク
これまでの記事で、マイクロプラスチックが私たちの食事や空気を通じて体内に取り込まれていること、そして血管に入り込むと健康被害の原因になる可能性があることをお伝えしました。
では、体内に入ったマイクロプラスチックは、その後どうなるのでしょうか?
分解されるのか、それとも体のどこかに溜まるのか…。今回はその「行き先」と「リスク」について、最新の研究をもとにお伝えします。
マイクロプラスチックは、大きさが5mm未満、ナノサイズになると0.001mm以下です。
食事や飲料から取り込まれたものは、まず消化器官を通って小腸へと進みます。
通常、腸の粘膜は有害物質を排除する働きを持っていますが、マイクロプラスチックは非常に小さく、時にこの防御をすり抜けて腸管から血流やリンパ系に入り込むことが確認されています。
🧪 出典:University of Vienna(2022年)では、ヒトの腸組織からマイクロプラスチックが検出され、慢性炎症と関連する可能性があると報告されています。
近年の研究で、大気中にもマイクロプラスチックが存在していることがわかってきました。屋内の埃、合成繊維、車の排気などがその原因です。
吸い込んだ場合は、肺胞(肺の奥深く)に到達することもあります。そこから
ことが確認されています。これは、全身への巡回ルートに入ることを意味します。
ここが気になるポイントですが、現在のところ、マイクロプラスチックが体内で完全に分解されるという証拠はほとんどありません。
プラスチックはもともと自然界で分解されにくく作られています。消化酵素や胃酸でもほとんど溶けず、数週間〜数ヶ月間、体内にとどまるとされています。
ただし、一部のナノサイズ粒子は化学的に変質したり、胆汁や便を通じて排出されるケースもあると報告されています。
2024年に発表された報告では、死亡後に解剖された人の血管、肝臓、腎臓、脳からマイクロプラスチックが検出されました(Lancet eBioMedicine, 2024)。
特に注目されているのが以下の臓器です:
このように、排出が難しい部位に蓄積すると、慢性炎症や免疫反応を引き起こすリスクがあります。
🔎 出典:Yong et al., Environmental Science & Technology(2024)
“Detection of microplastics in human cerebrospinal fluid and blood vessels”
朗報として、マイクロプラスチックの一部は排出されることがわかっています。実際、ヒトの便サンプルからマイクロプラスチックが検出された研究は複数あります。
主な排出ルートは:
しかし、全体のどれほどが排出されるかは未解明であり、「蓄積と排出のバランス」が個人差によって異なると考えられています。
まだ研究段階ではありますが、次のような生活習慣が排出促進に寄与する可能性が示されています。
また、プラスチックをなるべく体に入れない工夫(第3回で紹介)とあわせて行うことで、蓄積を最小限に抑えることが可能です。